HOME > 手記 > 毒ガスの人体実験を受けた私

< 新しい記事 | HOME | 古い記事 >

毒ガスの人体実験を受けた私
[手記]
 平成18年の会員集(※)にも書いたが、催涙ガス、嘔吐ガス、クシャミガスの人体実験はとても苦しかった。終わって15分の小休止があった。15分休んでも体のふらつく兵は病院へ連れて行き、手当てして回復すれば再度訓練を続けたのだ。イペリット、ルイサイトの実験は 18年の会員集にも少し書いたが、今考えると人権無視といっても過言でないと思う。連隊では 時々威張った将校が、「お前たち兵卒は消耗品だ、一銭五厘のハガキ一枚でどうにでもなる」ということを耳にしたことを今でも思い出すことがある。私と若林久男くんの2人は歩兵27連隊の特別教育にも参加させられたので、イペリット、ルイサイトの実験は2回なので体の異状は他の兵よりも大きかったことを、戦後、戦友会で逢う都度語り合った。連隊でイペリット、ルイサイトの実験の時に教官○○少尉殿に私は「実験後、人体に異状が残ることはないのでしょうか」と聞いたら、「お前は甲種合格一人の軍人となったのだ。お前の体は自分のものではない。大日本帝国と天皇陛下に捧げた体なのだ、つべこべ言わず真面目に訓練を受けろ」と言われた。

 イペリット、ルイサイトのことは会員集(※)に前回書いたので除くが、連隊でガス教育を受けた19名は、戦地に行ってから間もなく原液をつけた所が時々異状があることを語り合うようになった。本部付きで行動している私と若林君が時々足に手をやるのを見た軍医殿に、2人は足の同じ所にどうして手をやるのだと聞かれて、連隊でのことを話したら、「今は軍医としては自分の考えを語ることはできないが、一般地方医であったら毒ガスの人体実験は反対するだろう」と語った。

※平成18年の会員集....平成18年発行 北海道自分史友の会 会員集のこと。一般の書店では手に入らないと思われる。


[手記]

Edited by じゅんか 2009-06-01 17:20:34
Last Modified 2009-06-02 22:14:30

< 新しい記事 | HOME | 古い記事 >


お問い合わせ
Copyright © 2009-2019 press328.com. All Rights Reserved
Produced by Press328.com